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2001年6月 5日 (火)

【エッセイ】ワイドショーを見る

 なにを隠そう、わたしはテレヴィのワイドショーが大好きである。最近のワイドショーの一番の注目は、「ライオンハート小泉純一郎」で、やれ「田中カクエイ真紀子」女史やら「オトボケ塩爺」などキャスティングの妙もあって、ヤンヤヤンヤの騒がしさである。噂によると、「小泉内閣メールマガジン」はパンク寸前の盛況とか。この旺文社メールマガジンもがんばらねば……。でも、面白さ馬鹿馬鹿しさのゴッタ煮みたいなワイドショーだが、いまの経済状況や教科書問題・憲法問題など、ふと正気になって眺めてみると、笑っている場合じゃないのかもって気もする。
 しかも、最近のワイドショーでは気になる事件が多い。先日東京の西武線で、若者が「もっと詰めてもらえませんか」と言ったことで同年代の若者に駅で暴行を受け死亡した事件や、そのまえに東京三軒茶屋で、電車のなかの口論が原因で、四人の若者によってたかって殴られ死亡したサラリーマンの事件など、とにかくささいなことで巨大な暴力や悪意が発生する事件が多い。
 ワイドショーのコメンテーターの御高説では、それは現代社会のコミュニケーション不足が原因、あるいは現代日本人は肉食中心の食事をするようになった結果、尿酸値(?)が高くなり、キレやすくなった。いや、それはカルシュウム不足だ……。とにかくさまざま、「百家争鳴」。
  肉がどうとかカルシュウムがどうとかは知らないけど、とりあえずは、みんなストレスがたまっているらしく、最近、駅のホームや車中で口論をよく見かける。すぐにムキになるし、すぐに「コノヤロウ」って感じ。率直に言って、もっと「言葉」を使えないのかと思うんだけど、若者に限らず最近話し下手が多くなった感じがする。自分の興味のあることになるとしゃべり散らすんだけど、相手に正確に自分の意志を伝えようとなると、なんかぎこちない。ケータイでの話し言葉も怒っているように聞こえるし、なんか早口。
  そんなとき思い出したのが、昔見たアメリカ映画のワンシーンである。暗闇せまるなか、まったくの赤の他人であるふたりの男が、ヒッチハイクの車を求めて、砂漠の広がる荒涼たる路上に取り残されていた。ヒッチハイカーであるふたりの男は、我先にと、ほとんど通ることのない車を求めて、お互いライバル意識をむき出しにしていた。気まずい雰囲気。一雨きそうな緊張した厚い雲。夜の闇はどんどんせまってくる。そんなとき、なんかの拍子で、片方の男がタバコを取り出しもう片方に勧めた。相手の男は驚きながら、それでもずうっと二人きりで取り残された連帯感からか、素直にタバコをうけとった。おずおずと男がタバコを口に運ぼうとした瞬間、片方の男がマッチを擦って相手のタバコに火をつける。その刹那、二人の顔がタバコの赤い炎に照らされ、優しい笑みがふたりの男の顔に浮かび上がった。二人の男から緊張感は失せ、赤い炎のなかに親密な空気が満ちる。 タバコ一つ、タバコの火一つのことだけ。思うに、言葉がなくても相手に「心」を贈りさえすれば、コミュニケーションはとれる。そう言えば、なんかあって凹んでいるとき、友だちが無言で「飲む?」って顔して渡してくれた缶コーラ。そのとき、ホッと救われた気がしたって、そんな経験のある人多いんじゃない。まずは、相手に対し「ムキ」にならずに「スキ」になろう。
 そんなこんなでワイドショーを見ながら、実は考えることって結構あるものなんですネ。

注)このエッセイは2001年6月に載せたものを再度寄稿しております。

6月 5, 2001 4. エッセイ |

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