【エッセイ】風薫る五月って……
風薫る季節、晴れわたった青空が、颯々(さつさつ)とした風を、わたしたちの胸の奥底まで届けてくれる。気持ちがよくってしかたがない。でもその反面、このころは「五月病」って言葉があるように、晴れわたった青空の片隅に自分自身の孤独が影を落としているような、そんな季節でもある。
この時期、大学ではチヤホヤされた「新歓コンパ」も終わり、期待したより数段つまらない講義が日常的に続き、面白そうだと思って入ったサークルも居場所がない感じがして、おまけに友達も思ったようにはできない。バイトも割のいいのはないし、アレアレッてうちに落ち込んで、ぼーっと、「こんなのが五月病?」って自分自身に思わず聞いてみたりする。 そういえば、去年の今ごろは、浪人の屈辱をはらすべく、必死になって予備校の授業についていったよなぁ……。かーっと燃えていたよなぁ……。日本史のヤガシワどうしてるかなぁ……。
風薫る五月。「センセイ! 飲みに連れてってくださいよぉー」。そんな大学生がやってくる季節。「オー、元気でやってるかぁ」「大学どうだぁ」なんて応えるわたし。でも、知ってるのさ。君が五月の憂鬱に悩んでるのを。「そっかぁ、じゃ、今日行くかぁ……」
ところで、わたしは幸か不幸か 浪人せずにすんだ。東北は秋田出身のわたしにとって東京は、まさに「花の都」。都会のスピードについていけなかった。思わず、高校時代の友人に電話をする。今度、メシでも食わねぇーか。「なに言っているんだ。大学生はイイよな」。そうか彼は浪人したんだ。別の友人にTel。でも、その友人は、「悪いんだけど、オレ、サークル忙しんだ」。結局一人。
わたしの入った大学は、私鉄の駅を降りると、大学の記念館に向かって銀杏並木が立ちならび、右手に折れると広い陸上競技場がある。天気のいい五月。孤独に傷つき講義をさぼったわたしは、だれもいない運動場の芝生で一人ひなたぼっこ。ふと気づくと間抜けな顔をした野良犬が一匹、わたしの隣でひなたぼっこ。可哀想に、誰かがいたずらしたんだろう。犬の顔には、マジックで眉毛が書かれ、目の周りは丸く黒く塗られ、胴体には大学キャンパスの地名にちなんで「日吉丸」と書かれていた。キョトンとわたしの顔を見つめる「日吉丸」。笑うしかない。なんだ、おまえも孤独かい。しょーもねぇーなぁ。野良犬「日吉丸」はすこし臭った。でも、その臭いは、なんかホッとした懐かしい臭いだったなぁ……。
注)このエッセイは2001年5月に載せたものを再度寄稿しております。
5月 8, 2001 4. エッセイ | Permalink
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